離婚で、住宅ローンの名義は変更できる?問題点をパターン別に解説!

離婚で、住宅ローンの名義は変更できる?

 

前回のブログでは、財産分与の基礎知識と、返済中の住宅ローンがある場合どのようにすれば良いのかの概要をお伝えしました。
離婚したら住宅ローンは誰が支払う?離婚時の財産分与の注意点とは

家を売却するか、住み続けるかを検討して、売却せずどちらかが住み続ける事になった場合、住宅ローンの返済方法や住宅ローンの支払い名義をどうするか、また家の所有者名義をどうするかについても、取り決めをしておく必要が出てきます。

まず注意する点は「住宅ローンの支払い名義と、自宅の所有者名義は別」だということです。

住宅ローンを組むときに、一般的には住宅ローンの負担割合に応じて所有権登記の持ち分割合を決められているかと思います。
住宅購入資金の負担割合と、所有権登記の持ち分割合が異なると、贈与税の課税対象となるケースがあるからです。

この場合、例えば住宅ローンの支払いが夫名義であれば、所有権登記も夫のみ、ローンの支払いが夫婦で折半で支払う名義であれば、所有権登記も夫及び妻がそれぞれ二分の一ずつの持ち分割合となっています。

そのため、住宅ローンの名義と所有者名義は同じだと混同されていることがあります。
しかし、必ず負担割合と持ち分割合を同じにしなければならないわけではありません。
例えば、夫が住宅ローンの7割を負担しているが、所有権登記の持ち分割合は夫婦で二分の一ずつといったこともありえます。

この住宅ローンの支払い名義と自宅の所有者名義は、住宅ローンの返済が滞りなく行われていて、夫婦関係が続いている間は問題になることはないでしょう。
しかし、離婚をすることになったときに、この2つの名義についてきちんと取り決めをしておかなかった場合、後々大きな問題となるケースがあります。

また、住宅ローンの名義は、離婚を理由に名義変更といったことは基本的にできません。
自宅の所有者名義は、住宅ローンの返済途中でも変更することは可能ですが、住宅ローンの契約に反する場合がほとんどです。
さらに、住宅ローンとは債務者(住宅ローンの名義人)がその物件に住んでいることが条件となっているため、住宅ローンの名義人が家を出て、ローンの支払いだけは続けるとしても問題が出てきます。

そこで今回は、離婚における住宅ローンの支払い名義と自宅の所有者名義のうち、住宅ローンの支払い名義について、以下のパターン別に、問題点と実務上の対応の仕方を解説したいと思います。

  • 1.住宅ローンの支払い名義が夫で、妻が連帯保証人の場合
  • 2.住宅ローンの支払い名義が夫のみ(妻が連帯保証人となっていない)場合
  • 3.住宅ローンの支払い名義が連帯債務(夫・妻の両方)の場合

それぞれのケースで注意すべき点や、対処法が異なりますので、ご自身のケースに当てはめてご検討なさってください。
また1.2.については便宜上、夫を債務者としていますが、妻が債務者の場合は夫と妻を置き換えてご理解いただけますと幸いです。

【1.住宅ローンの支払い名義が夫で妻が連帯保証人の場合】

(1)夫が住み続ける場合

この場合、住宅ローンの名義人である夫が住んでいるため、債権者から問題視されることはありません。
ローンの支払いについても、延滞や支払い不能とならなければ、連帯保証人である妻に支払いを求められることもありません。

しかし、連帯保証人は債務者と同等の責任がありますので、住宅ローンに対する夫の支払いが遅れたり、支払えなくなったりした場合、連帯保証人である妻がローンの支払いを求められることになります。

そのため、離婚と同時に妻が住宅ローンの連帯保証人名義を解除したいと思われるのは最もですが、これはきわめて難しいと言わざるをえません。
通常、住宅ローンを組むときに、債権者(銀行など)の同意がなければ連帯保証人を解除することはできないとなっています。
ですので、同意を取り付ける事ができれば解除は可能なのですが、その条件として離婚するからという理由だけでは、同意が得られる事はないからです。

住宅ローンの連帯保証人名義を解除する方法としては、以下の様な方法が考えられます。

○ 代わりの連帯保証人を用意する

代わりの連帯保証人を立てる事ができて、その新しい連帯保証人を債権者が認めれば、連帯保証人を解除できます。
しかし、現実問題として連帯保証人になってもらえる人を探し出すことは困難ではないでしょうか。

○ 連帯保証の代わりに担保を差し出す。

これも債権者の同意を得られれば、連帯保証人解除は可能かと思われますが、債務の不履行(住宅ローンの返済ができなくなったなど)のときは、担保を失うことになります。
従ってあまり現実的とは言えないのではないでしょうか。

○ 住宅ローンの借り換えを行う

夫が単独で(連帯保証人を付けずに)住宅ローンを借り換えることができれば、結果として住宅ローンの連帯保証人ではなくなります。
一番現実的ではありますが、借り換えが可能な金融機関を見つける必要があり、実際にはなかなかハードルが高いと言えるでしょう。

妻の立場からすると、連帯保証人が解除できない場合は、離婚後に夫が債務不履行となったときに、もう住んでない家の住宅ローン返済を迫られる心配が、ローン完済まで続くことになります。

ですので、連帯保証人の解除ができないのであれば、自宅の売却をして住宅ローンを精算することも含め、もう一度よく話し合ってみられることをお勧めします。

(2)妻(妻子)が住み続ける場合

この場合は、住宅ローンの名義人である夫が家を出て行くため、住宅ローンの前提である「住宅ローンの名義人がその住宅に住んでいること」が守られないことになります。
そのため、これを理由に債権者(銀行など)は一括返済を求めることができることになります。

実際には、返済が順調に行われていれば、一括返済を求められることはないでしょう。
しかし、返済が滞った場合は連帯保証人である妻に返済する義務が生じます。

このとき妻に、元夫に変わって返済するだけの経済力があれば、一括返済とはならないでしょう。
しかし、もともと夫が支払う約束であった住宅ローンを立て替えるということは、理不尽ではないでしょうか。

また、連帯保証人である妻が返済できなければ、一括返済を求められた後、差し押さえから競売へという流れになります。
この場合、妻は家を出て行かなければならず、オーバーローンの場合は、競売での売却額を差し引いた住宅ローンの残債についても返済する義務が生じてしまいます。

これは、仮に妻が連帯保証人を解除できたとしても、夫が債務不履行を起こしてしまえば自宅の差押えとなってしまいます。
また、夫と妻の間で賃貸契約を交わすなどの方法でも、差押えて競売となった場合は、妻が家を出なくてはならなくなります。
したがって、夫が確実に住宅ローンの返済を完済まで行うという約束を守ってもらうしかありません。

この、住宅ローンの返済を完遂させるための確実な方法というものは、残念ながらありません。
ですので、離婚時の話し合いで、できる限りリスクを減らす方法をとっておくことが大事になります。

このために有効な方法として、「夫の住宅ローン返済について妻の求償権を公正証書または調停調書にする」という方法があります。
これは簡単に言うと、夫が住宅ローンの返済を、債権者に直接ではなく妻を経由して返済していく約束をすることで、夫の返済が滞った場合に、夫の財産を差し押さえ等の対応ができるようにしておくということです。

夫が住宅ローンの返済を直接行う場合、返済が滞った場合の対応策が妻にはありません。
しかし、離婚協議のときに妻を間に挟んで返済を行う約束をしてもらうことで、返済が滞ったときに妻は夫に対して「求償権」を得ることができます。

これをさらに確実にするため、離婚協議書を公正証書にする、またはこの内容を調停調書に盛り込んでもらうことで、債務不履行時に元夫の財産を差し押さえることも可能になり、リスクを減らすことができます。

ただ、これらの手続きをご自身で行うことは難しいかと思いますので、専門家に相談なさったほうがよいかと考えます。

【2.住宅ローンの支払い名義が夫のみ(妻が連帯保証人となっていない)場合】

(1)夫が住み続ける場合

この場合、妻には何ら責任が生じることはなく、仮に夫が債務不履行を起こした場合でも、妻に請求がくることはないため問題がないといえるでしょう。

ただし、妻が連帯保証人ではなくても、妻の親族などが連帯保証人の場合には、【1】のようなリスクを考えておく必要があるでしょう。

(2)妻(妻子)が住み続ける場合

この場合、住宅ローンの債務については、夫が債務不履行を起こした場合でも、妻に請求がくることはありません。
しかし、家を差し押さえられ競売となった場合には、妻は家から追い出されてしまうことになります。

そのため、夫が住宅ローンの返済を滞らせるリスクを減らしておく必要があります。
具体的には、上記【1】のように専門家へご相談なさって、離婚協議書を公正証書にしておかれることをお勧めします。

【3.住宅ローンの支払い名義が夫婦の連帯債務(夫婦ともに債務者)の場合】

(1)夫が住み続ける場合

この場合も、妻が連帯保証人だった場合と同じように、妻は連帯債務から外れたいと考えられる事だと思います。
ただし住宅ローンの連帯保証人から外れたい場合と同じように、実際には難しいと言えます。

住宅ローンを連帯債務で組んでいた場合は、夫婦の収入が合算されてより高額な住宅ローンを組まれている場合がほとんどです。
そのため、離婚により世帯収入は減ることになりますので、高額な住宅ローンの返済を続けることは現実的とは言えません。

また、住み続ける夫にしても、収入に見合わない住宅に住むことになりますので、住み続けるのはあまり良い選択とは言えないのではないでしょうか。

さらに連帯債務の場合特有の問題点として、所有者名義(所有権の持ち分)をどうするかということも話し合う必要があります。
この所有者名義については、連帯債務の場合以外にも、例えば妻が頭金を支払い、夫の名義で住宅ローンを組んでいたなどのケースでも問題になる事があります。
(この所有者名義については、次回の記事で詳しくお話ししていきます。)

従って、やはりこの場合も任意売却により住宅ローンを精算して、お互いに新しい生活をスタートさせることがベストではないでしょうか。

(2)妻(妻子)が住み続ける場合

この場合も、夫が住み続ける場合と同様に、住み続けるメリットよりも、デメリットが多いと言えるでしょう。

連帯債務ということは、住宅ローンの返済が滞るリスクも2倍になるということです。
仮に、夫の支払いをそのまま継続させることができたとしても、住宅ローン以外に養育費などの負担があった場合は、いずれ破綻してしまう可能性が大きいと思われます。

お互いの再スタートのためにも、どちらかが住み続けて、二人とも完済まで債務を背負い続けるのは得策ではないと考えます。

 

以上のような対策以外にも、例えば妻の方に経済力があれば、夫名義の住宅ローンを妻名義の住宅ローンに借り換えるなどの方法も考えられます。

しかし、実際にはやはり難しい場合が多いと思われますので、住宅ローンの名義と返済の約束が曖昧まま離婚してしまう前に、専門家へのご相談を強くお勧めします。

また、離婚後のリスクを減らすことはできても、100%確実な方法というのは存在しません。
ですので、特に年齢の若い方(30代40代の方)は、離婚時に任意売却をすることで、住宅ローンを精算して次に向かわれる方が増えているように感じます。

「任意売却の窓口」でも、弁護士や司法書士との提携で、無料にて離婚に関する住宅ローンの返済問題のご相談を受け付けておりますので、どうかお気軽にお問い合わせください。
 

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