登録免許税について – 不動産売買時に必要な税金その2

福岡法務局

 

前回は不動産売買契約書を交わすときに必要な印紙税についてお話ししました。
印紙税について – 不動産売買時に必要な税金その1

今回は、登記時に納税する「登録免許税」について話していきたいと思います。

登録免許税とは、法務局に登記の申請を行うときに納める国税です。
登録免許税は、登録免許税法という法律で定められており、不動産登記以外にも会社の商業登記や特許などの登録、弁護士など士業の登録や宅地建物取引業などのの免許を受ける場合にも納める必要があります。

不動産売買で必要になる登記は、主に「建物表題登記」「所有権保存登記」「所有権移転登記」「抵当権設定登記」「抵当権抹消登記」の5つです。(他に仮登記抹消登記や分筆登記などが必要なケースもありますが、レアケースのためここでは割愛します。)

このうち「建物表題登記」には「登録免許税」は課税されません。
従って、所有権保存・移転、抵当権設定・抹消のそれぞれの登記時に登録免許税を納めます。
さらに、土地と建物は別々に登記されますので、土地と建物それぞれに登録免許税が課せられます。

登録免許税の税額は、課税標準(税額を算出する上で基礎となる課税対象)にそれぞれ決められた税率を乗じて税額が算出されます。
所有権保存・移転の課税標準は不動産の価額、抵当権設定の課税標準は住宅ローンの借入額、抵当権抹消は不動産1個につき一律1,000円(税率はありません)となっています。

また、住宅用家屋(マイホーム)の場合は、床面積が50平方メートル以上であることや、新築又は取得後1年以内の登記であることなどを条件として、それぞれ軽減税率が設定されています。

さらに、新築または建築後使用されたことのないことが条件で、「特定認定長期優良住宅」「認定低炭素住宅」に対する軽減措置もあります。
他に、宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の住宅用家屋(いわゆるリノベーション住宅)にも軽減措置が適用されます。
買取再販で扱われる住宅の取得に係る登録免許税の特例措置の創設について | 国土交通省

具体的には以下の様な税率となります。

【登録免許税一覧】

登記の原因 課税標準 本則の税率 軽減税率※
所有権保存登記 不動産の価額 0.4% 0.15%
所有権移転登記
(土地の売買)
不動産の価額 2% 1.5%
所有権移転登記
(建物の売買)
不動産の価額 2% 0.3%
抵当権設定登記 借入額 0.4% 0.1%
抵当権抹消登記 不動産1個につき 1,000円

※「軽減税率」は、住宅用家屋について、2017年3月31日までの取得に適用されます。

※「軽減税率」の適用条件は以下の通りです。

  • 新築住宅について
    ・個人の住宅用家屋(マイホーム)であること
    ・床面積(登記簿面積)が50㎡以上であること
    ・新築又は取得後1年以内に登記されたもの
  • 中古住宅について
    ・個人の住宅用家屋(マイホーム)であること
    ・床面積(登記簿面積)が50㎡以上であること
    ・取得後1年以内に登記されたもの
    ・築後25年以内(木造は20年以内)のもの又は一定の耐震基準に適合するもの

【特定の住宅に対する軽減税率一覧】

登記の原因 軽減税率※
(長期優良住宅)
軽減税率※
(認定低炭素住宅)
軽減税率※
(要件を満たした
買取再販住宅)
所有権保存登記 0.1% 0.1% 0.1%
所有権移転登記
(マンション)
0.1% 0.1% 0.1%
所有権移転登記
(戸建て住宅)
0.2% 0.1% 0.1%

※「特定の住宅に対する軽減税率」は2016年3月31日までの取得に適用されます。

不動産登記の登録免許税は、一般的にいずれも買い主が全額負担します。
本来は、登録免許税法の規定により、売り主と買い主が連帯して納付義務を負うこととされていますが、取引慣行として通常売り主が負担することはありません。

また、納税はそれぞれの登記申請時に現金で納付しますが、3万円以下である場合は収入印紙を貼付することで納税が可能です。

それでは、それぞれの登記に必要な登録免許税を解説いたします。

【建物表題登記】

建物表題登記とは、まだ登記されていない建物の基本的な情報を、登記簿の表題として作成する登記です。
以前は表示登記と言われていましたが、不動産登記法の改正により表題登記となりました。

まだ登記されていない建物とは、新築の建物や、未登記のままだった建物を指します。
土地の場合、通常登記されていない土地はほとんど無いのですが、例えば国有地の払い下げを受けた場合などに土地表題登記の申請手続きを行います。

前述したとおり、建物表題登記には登録免許税の課税はありません。
ただし、建物表題登記は新築してから1ヶ月以内に申請することが義務づけられており、申請を怠った場合には、10万円以下の過料に処されることがあります。

また、通常は土地家屋調査士に登記申請を委任するため、その場合は費用として約10万円程度が必要になります。

新築マンションや建売住宅の場合は、売り主が先に済ませている場合が多いため、新築注文住宅に必要と考えておかれるとよいでしょう。

【所有権保存登記】

所有権保存登記とは、表題登記がなされていて、所有権の登記のされていない不動産について、初めて行う所有権の登記のことです。
この所有権保存登記がなされていないと、所有権移転登記や抵当権設定登記ができないため、売買や住宅ローンの借り入れができないと言うことになります。

土地は、通常であれば既に所有者がいる場合がほとんどで、それを購入した場合は所有権移転登記の手続きとなるため、所有権保存登記の手続きは必要ありません。

建物は、新築物件を購入した場合に所有権保存登記の手続きを行います。

登録免許税は不動産の価額を基準に算出されます。
この不動産の価額は、市町村に備え付けられている固定資産課税台帳に登録された価格となります。
(1,000円未満の端数は切り捨て。価格が1,000円未満の場合には1,000円となります。)

ただし、新築物件の場合は固定資産課税台帳に登録がありません。
そこでこの場合は、各法務局ごとに定められた「新築建物課税標準価格認定基準表」を基に不動産の価額が決定されます。
福岡法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表

例えば福岡で80㎡の新築マンションをマイホームとして購入した場合、「新築建物課税標準価格認定基準表」によると1㎡あたり121,000円となっていますので、121,000円×80㎡=9,680,000円が不動産の価額となります。

この金額に税率を乗じた額が、登録免許税となります。(※100円未満の端数は切り捨て)
9,680,000円×0.15%(軽減税率適用の場合)=14,520円
登録免許税=14,500円

【所有権移転登記】

所有権移転登記は、土地や中古の建物を購入したときや、任意売却、競売で買い受けた時などに申請します。

登録免許税は所有権保存登記と同じく不動産の価額を基準に算出されます。
この不動産の価額は、市町村に備え付けられている固定資産課税台帳に登録された価格となります。
(1,000円未満の端数は切り捨て。価格が1,000円未満の場合には1,000円となります。)

登録免許税を算出する場合の注意点として、土地・建物ともに適用税率が同じ場合は先に土地と建物の不動産の価額を合算して適用税率を乗じた額が税額となりますが、土地と建物の適用税率が異なる場合は、土地と建物それぞれの税額を算出した後、100円未満の端数をそれぞれ切り捨ててから合算します。

土地・建物ともに適用税率が同じ場合
(土地の不動産の価額+建物の不動産の価額)×適用税率
土地・建物の適用税率が異なる場合
土地の不動産の価額×適用税率+物の不動産の価額×適用税率

端数の切り捨て方により、税額に違いが出てくるため、このように規定されています。

【抵当権設定登記】

抵当権設定登記は、不動産を担保に借り入れを行う場合に行われる登記です。
従って、住宅ローンを組む場合も抵当権設定登記がなされます。

登録免許税は借入額を基準に算出されます。
税額の計算式は以下の通りです。

通常の税率
借入額×0.4%
軽減税率適用の場合
借入額×0.1%

例えば、軽減税率適用の要件を満たしたマンションを購入して、3,000万円の住宅ローンを組んだ場合は、3,000万円×0.1%=3万円が抵当権設定登記の登録免許税額となります。

なお、根抵当権については軽減税率の適用はありません。

【抵当権抹消登記】

抵当権抹消登記は、抵当権が設定してある中古物件を売り出すときや、任意売却時、競売で買い受けるときに必要な登記です。
税率は一律で、不動産1個につき1,000円となっています。

従って、土地と建物にそれぞれ設定してある抵当権を抹消登記する場合は、2,000円が税額となります。
なお、同一の申請書で20個以上の不動産について抵当権抹消登記をする場合は、20,000円が上限となります。

また、根抵当権の場合も税率は同じです。

 
登記には、それぞれの登録免許税以外に必要な費用として、司法書士に手続きを依頼した場合に、その手数料が発生します。
司法書士により手数料額は違いますが、おおむね5万円~10万円くらいが相場となっているようです。
(申請の内容や数によっても変動します。)

登録免許税の軽減措置は、住宅用家屋の軽減税率は法務省、長期優良住宅・認定低炭素住宅の軽減措置は財務省、買取再販住宅の軽減措置は国土交通省とそれぞれ管轄省庁が異なるため、少々複雑な面がありますが、いずれも税の負担軽減が期待できます。

平成27年4月1日以降の登録免許税に関するお知らせ | 法務省法務局
住宅に係る登録免許税の軽減措置 | 財務省
買取再販で扱われる住宅の取得に係る登録免許税の特例措置の創設について | 国土交通省

次回は、購入時の不動産取得税と売却時の所得税・住民税についてお話しします。

 

 

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