前回のブログ「 税金を滞納したらどうなる?納期限を過ぎてから差し押さえまでの流れ」では、税金を滞納した後の流れについてお話しいたしました。
税金は、滞納により財産を差し押さえられてしまうと、原則として完済しなければ差し押さえ解除とならないため、何を差し置いても納める必要があります。
しかし、どうしても納税が難しい場合、税金の種類や支払えない状況によって、支払いの猶予や減免を受けられることがあります。
個人事業者の方などでしたら、自主的に納税する必要があるため、一時的に税金や健康保険の支払いが難しくなるといったことはあるでしょう。
しかし給与所得者いわゆるサラリーマンの方は、給料から税金や社会保険料は天引きされているため、税金が払えない状況は考えられないかもしれません。
ですが給与所得者の方も、例えば突然の失業などで、給料天引きではなく自主的に納税する状況になったとき、税金が思ったより高額で支払いができないといったことはあり得るのではないでしょうか。
特に住民税や国民健康保険は、前年の所得に対して納める金額が決まりますので、退職した翌年に送られてくる納税通知書を見て、その金額の高さに驚かれる方も少なくないようです。
もし、税金が支払えないとなったとき、一番まずいのはそのまま何もしないで放っておくことです。
実は住民税や国民健康保険の保険料(保険税)、国民年金保険料などには支払いの猶予や減免といった制度があります。
これらの制度を受けるためには、それぞれに様々な条件がありますが、重要なのは支払い納期の前に役所の窓口へ相談するということです。
相談すれば必ず猶予や減免を受けられるわけではありませんが、その場合でも、事情によっては分割払いを認めてもらえるなどの対応をしてもらえる可能性があります。
それではどのような制度があるのか、詳しく見ていきましょう。
住民税(市民税)の減免と納税の猶予
住民税は地方税のため、納税の猶予や減免を受けることができる要件などは、自治体の条例などにより異なります。
ただし、納税の猶予は地方税法第15条、市町村民税の減免については地方税法第323条に定められているため、自治体により猶予や減免がないといったことはありません。
(徴収猶予の要件等)
第十五条 地方団体の長は、納税者又は特別徴収義務者が次の各号の一に該当する場合において、その該当する事実に基き、その地方団体の徴収金を一時に納付し、又は納入することができないと認めるときは、その納付し、又は納入することができないと認められる金額を限度として、その者の申請に基き、一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる。この場合においては、その金額を適宜分割して納付し、又は納入すべき期限を定めることを妨げない。
(市町村民税の減免)
第三百二十三条 市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができる。但し、特別徴収義務者については、この限りでない。
地方税法 | 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
福岡市の場合は、以下の要件のいずれかを満たす場合となっています。
納税の猶予
- ・災害を受けたり、盗難にあったとき
- ・本人や家族が病気にかかったり、負傷したとき
- ・廃業や休業したとき
- ・事業について著しい損失を受けたとき
猶予期間は原則として1年以内となっており、申請することで納期を遅らせたり分割で納めることが可能です。
住民税の減免
福岡市の場合、住民税の減免を受けるには、税の納期限の3日前までに申請書を提出する必要があります
- ・生活保護を受けている場合
- ・廃業、休業、失業等により、所得が減少した方で、一定の条件に該当する場合
- ・勤労学生に該当する学生・生徒の場合
- ・障がい者の場合
- ・相続により納税義務を承継した場合
- ・災害(火災・風水害など)により著しい損害を受けた場合
上記はいずれも福岡市の場合ですが、自治体によって、例えば冷害などによる農業収入の損失があった場合などの要件もあるようです。
納税でお困りの場合は、早めに各自治体の納税窓口(福岡市は各区役所課税課)へお問い合わせください。
国民健康保険の減免
国民健康保険については、減額・軽減・減免の3種類の措置があります。
福岡市の場合は以下の通りです
保険料の減額
前年(1月~12月)の所得が国の定める基準額以下の世帯について、保険料が減額されます。
減額割合 (基準額)前年中の所得の合計が下記の金額以下 7割 33万円 5割 33万円+26万円×(被保険者数+特定同一世帯所属者) 2割 33万円+47万円×(被保険者数+特定同一世帯所属者)
保険料の軽減
倒産・解雇・雇い止めなどにより離職された人の保険料が、届出により軽減されます。
- 対象者
- 雇用保険の「特定受給資格者」または「特定理由離職者」として失業等給付を受ける人
- 軽減額
- 軽減対象者の前年の給与所得を、100分の30とみなして保険料の算定を行います。
- 軽減期間
- 離職日の翌日の属する月から翌年度末まで。
- 届出に必要なもの
- 雇用保険受給資格者証
(※雇用保険受給資格者証を紛失している場合は、ハローワークで再交付の申請ができます。)
保険料の減免
災害、失業、倒産、その他の事情により保険料の納付が困難になったときに、保険料の減免を受けられる場合があります。
減免を受けるためには、原則として納期限前に申請する必要があります。
種類 減免事由 減免内容 災害 震災、風水害、火災等により、資産の3分の1以上の損害を受けた場合 損害の程度により、被災以後1年以内の保険料の50%~100%を減免 所得減少 今年中の見込み所得金額が420万円以下で、その所得が前年に比べて30%以上減少する場合 所得減少割合に応じて、所得割額の10%~100%を減免 低所得 今年中の見込み所得金額が法定軽減制度の所得基準に該当する場合 見込み所得金額に応じて、均等割額・世帯割額の20%~70%を減免 給付制限 刑事施設などに収監され、保険給付を受けられない期間が月をまたがってあった場合 一般の資格喪失に準じて減免 生活保護 生活保護の適用を受けることになった場合 当該年度の未納保険料を減免 旧被扶養者 社会保険などの被用者保険の本人が後期高齢者医療制度の被保険者となったため、その被扶養者(65歳以上)が国民健康保険に加入する場合 ・旧被扶養者に係る所得割の全額を減免
・旧被扶養者に係る均等割額の半額までを減免
・旧被扶養者のみの世帯の場合は、世帯割額の半額までを減免
相談窓口は、各自治体(福岡市の場合は各区役所)の保険年金担当課となっています。
また、保険料だけではなく自己負担分についても、高額療養費(自己負担が1ヶ月21,000円以上の分)の支給や、災害などの理由による減免制度があります。
国民年金の猶予と減免
経済的な理由で国民年金保険料の納付が困難なときは、申請して承認されると保険料の納付が免除または猶予を受けることができます。
申請は2年1か月前の月分までさかのぼることができます。
前年の合計所得金額による減免
免除の割合 前年の合計所得金額 全額免除 (控除対象配偶者及び扶養親族の数+1)×35万円+22万円以下 4分の3免除 78万円+(A)+(B) 半額免除 118万円+(A)+(B) 4分の1免除 158万円+(A)+(B)
- (A)
- ア. 老人扶養親族1人につき、48万円
- イ. 16歳以上23歳未満の扶養親族1人につき、63万円
- ウ. ア、イに該当しない扶養親族1人につき38万円
- (B)
- ・雑損控除額、医療費控除額、社会保険料控除額、小規模企業共済等掛金控除額、配偶者特別控除額、肉用牛の売却による事業所得にかかる控除額、障がい者1人につき27万円(特別障がい者の場合40万円)
- ・寡婦又は寡夫27万円(特別寡婦の場合35万円)
- ・勤労学生27万円
前年の合計所得金額以外の減免
- ・障がい者または寡婦であって、前年の合計所得金額が125万円以下
- ・生活保護法による生活扶助以外の援助、特別障害給付金を受けている場合
- ・失業により保険料を納付することが困難と認められるとき (「雇用保険受給資格者証」または「離職票」の写しが必要)
- ・震災、風水害、火災等により、財産の2分の1以上の損害を受けたとき
相談窓口は、各自治体(福岡市の場合は各区役所)の保険年金課または年金事務所となっています。
上記のような住民税や健康保険以外にも、災害による被害があったときなどに固定資産税の減免や軽自動車税の減免措置など、自治体により軽減措置がある場合があります。
また、国税である所得税についても、災害により住宅や家財が損害を受けた場合の減免措置などがあります。
災害減免法による所得税の軽減免除 | 国税庁
住宅ローンの支払いが難しくなった場合と同様に、税金の支払いができない場合も、早めに対処することでよりよい解決策が見つかります。
もしもの時は、必ず納期前に相談なされることをお勧めいたします。