もし住宅金融支援機構から「任意売却パンフレット」が送られてきたら

任意売却パンフレット

 

住宅ローンを組むときに、「フラット35」を利用されている人も多いのではないでしょうか。
「フラット35」は、独立行政法人である「住宅金融支援機構」が、民間の金融機関(銀行など)と提携して提供している住宅ローンです。(他に「フラット35」Sや「フラット50」などもあります)

ちなみに独立行政法人とは

独立行政法人制度とは、各府省の行政活動から政策の実施部門のうち一定の事務・事業を分離し、これを担当する機関に独立の法人格を与えて、業務の質の向上や活性化、効率性の向上、自律的な運営、透明性の向上を図ることを目的とする制度です。

総務省行政管理局では、独立行政法人の新設、目的の変更その他当該独立行政法人に係る個別法の定める制度の改正及び廃止に関する審査を行っています。
独立行政法人とは|独立行政法人・特殊法人 – 総務省

「住宅金融支援機構」は、「住宅金融公庫」の業務を継承して2007年に発足しました。
従って「住宅金融公庫」から住宅ローンを借りていた場合でも、延滞した場合は「住宅金融支援機構」から督促を受けることになります。

「住宅金融支援機構」の住宅ローンを利用している場合、支払いの滞納期間が1ヵ月続くと、はがきによる督促状が送られます。
その後、滞納期間2ヵ月目には、はがきと電話での支払い督促が始まります。

さらに「返済に関する提案」が書かれた書類が届き、その後「任意売却パンフレット」として「任意売却に関する申出書」が送られてきます。
※ 任意売却パンフレット|住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)

ここまでに任意売却を決断し、「住宅金融支援機構」に任意売却の申し出をしなかった場合は、「期限の利益」を喪失し、競売が申し立てられます。

このように、「住宅金融支援機構」は、住宅ローンを払えなくなった方には、競売になる前に任意売却を積極的に勧めてきます。
住宅金融支援機構のWEBサイトにも「任意売却をお勧めする理由」が掲載されています。
※ 融資住宅等の任意売却|住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)

ただし、他の金融機関の住宅ローンを滞納した場合とは異なり、任意売却について所定の書式での詳細な販売活動報告を求めるなど、「住宅金融支援機構」独自の決まりを守って手続きを進めなければなりません。

そこで今回は、住宅金融支援機構の任意売却手続きの流れについてご紹介したいと思います。

【住宅金融支援機構の任意売却とは?】

住宅金融支援機構は、上記の通り、住宅ローンが延滞している人に任意売却を勧めてきます。
「任意売却をお勧めする理由」の中には、「お客さまの負債の縮減につながります。」と書かれていますが、債権者である住宅金融支援機構にも、より多くの債権を回収できるメリットがあるためです。

任意売却を決断して住宅金融支援機構と話を進めるにあたり、他の金融機関が提供する住宅ローンとは異なり、注意しなければならない点があります。

それではその違いを見てみましょう。

<住宅金融支援機構による任意売却手続きの流れ>

① 仲介業者を選定
② 任意売却に関する申出書の提出
③ 物件調査・価格査定
④ 売出価格の確認
⑤ 専任媒介契約の締結
⑥ 販売活動開始
⑦ 購入希望者選定・抵当権抹消応諾の審査
⑧ 売買契約の締結
⑨ 明け渡し
⑩ 代金決済(所有権移転)・抵当権抹消

<民間金融機関による任意売却の流れ>

① 仲介業者を選定
② 物件調査・価格査定
③ 売出価格の確認
④ 専任媒介契約の締結
⑤ 販売活動開始
⑥ 購入希望者選定
⑦ 債権者の同意を取り付ける
⑧ 売買契約の締結
⑨ 明け渡し
⑩ 代金決済(所有権移転)・抵当権抹消

一見同じように見えますが、この中で大きく違うのは、住宅金融支援機構の場合は「②任意売却に関する申出書の提出」が必要なことです。

さらに「⑥販売活動開始」されると、住宅金融支援機構の場合、購入希望者が現れるまで毎月1回「販売活動状況報告書」を提出する必要があります。
この書類は任意売却手続きを依頼した仲介業者(不動産会社)が提出します。

なお、「任意売却に関する申出書」は必ず、債権回収会社(サービサー)に債権回収を委託される前に行う必要があります。
債権回収会社(サービサー)に債権回収を委託され競売が申し立てられると、任意売却に応じてもらえなくなる可能性が高いためです。

住宅金融支援機構ではなく民間金融機関の住宅ローンであれば、競売申立て後も任意売却がまとまれば比較的応じてもらえますが、住宅金融支援機構の場合そうはいきません。

「任意売却に関する申出書」を提出した後は、「任意売却パンフレット」に記載されている手順に沿って手続きを進めていきます。

また、「任意売却に関する申出書」を提出する前に、必ず仲介業者(不動産会社)を選ぶ必要があります。
以前のブログ「 競売と任意売却の違いとは?競売と任意売却のメリット・デメリット」でも書きましたが、任意売却は専門性の高い特殊な業務です。

従って、大手の有名な不動産会社に依頼すれば安心というわけではありません。
任意売却実績がある、任意売却専門もしくは任意売却に強い不動産会社を選ぶようにしてください。

もし、任意売却をお願いできる不動産業者が見つからない場合は、下記のように住宅金融支援機構から紹介を受けることもできますが、できるだけご自身で仲介業者を見つけられることをお勧めします。

【仲介業者の選定について】

「任意売却パンフレット」に書かれているとおり、原則として債務者が仲介業者を選定します。
仲介業者を選定するには、以下の3つの方法があります。

①「債務者や債権者自ら選定」
債務者や所有者が直接、仲介業者に依頼をする方式です。

②「売却価格申出方式の選定」
あらかじめ「任意売却に関する情報提供依頼書」を提出することで、物件の概要を参加希望の仲介業者にお知らせし、原則として最も高額な売出価格を出した業者を紹介する方式です。

③「住宅金融支援機構・保証協会からの個別紹介による業者選定」
売出価格申出方式が利用できない場合、住宅金融支援機構が仲介業者を紹介する方法です。

※任意売却の場合、仲介業者と債務者が“任意”で“専任媒介契約”を締結します。
紹介後は、住宅金融支援機構が一切の責任を負うことはありません。

任意売却は原則として、複数の仲介業者に依頼することはできません。
専任媒介契約を締結して、1社に専属で売却を進めてもらうことになります。

ただし留意しておかれた方が良いのは、自ら選らんだ仲介業者はお客様である債務者の方が有利になるように任意売却を勧めますが、住宅金融支援機構からの紹介の場合は、債権者である住宅金融支援機構に有利になるよう進められる可能性があると言うことです。

【任意売却に関する申出書の内容】

任意売却に関する申出書には、署名欄と手続きの内容が記述されています。

・当該債務にかかわる担保物件売却の同意
・売却代金を返済に充てる
・売却後の残債務額に満たない場合の損害金の減免の申出
・仲介業者への個人情報と物件情報の提供をする
・仲介業者が売却情報を債権者へ提供をする
・関係管理者が債権者へ残債務の確認・残債務の提供をする
・残債務の全額に満たない時の弁済の申出
・担保物件にかかわる火災保険を残債務に充てる
・複数の質権者※1.がいる場合、配当は債権者の定めに従う
・債権者が任意売却の成立が困難と判断した場合、不動産競売の申し立てに同意する

※1.「質権者(しちけんしゃ)」とは、
債権者が債務者より、債権の担保として物(質物)を受け取ります。
質物を債務の弁済が終わるまで留置し、弁済が無い場合、質物を売却して代金から優先弁済を受ける権利がある者です。

また、任意売却に関する申出書を提出するときには、他に以下の書類も必要になります。

・専任媒介契約書
・売出価格確認申請書
・価格査定書
・実差チェックシート
・路線価図
・周辺地図
・住宅地図
・物件写真

これらの書類をもとに、住宅金融支援機構から売出価格の提示がなされます。
 
以上のように、住宅金融支援機構と民間の金融機関の任意売却には手続きの違いがあります。
できれば、住宅ローンの滞納初期の段階で、まず相談だけでもなさることをお勧めいたします。

 

 

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