税金を滞納したまま放置しておくと、最終的には財産を差し押さえられ、公売または取り立てにより強制的にお金に変えさせられて税金の滞納分に当てられます。
納税は「勤労の義務」「教育の義務」とあわせて日本国民の3大義務とされ、憲法30条に「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と定められています。
したがって、個人・法人ともに税金は納める必要があり、定められた期限に納めなかった場合は税の滞納をした「滞納者」となってしまいます。
給与所得者の場合、所得税・住民税などは給料から天引きされるため、通常、税の滞納をすることはほとんど無いでしょう。
しかし、給与所得者であっても、給与以外の収入が年間で20万円以上ある方や年間110万円以上の贈与を受けた方、個人事業主の方などは、確定申告により納税をしなくてはなりません。
また、不動産を所有している場合の固定資産税などは、役所から送られてくる納付書に基づき納める必要があります。
税金以外にも、「国民健康保険料」「国民年金」についても、滞納した場合は差し押さえの対象となります。
余談ですが、国民健康保険は、自治体により「国民健康保険料」もしくは「国民健康保険税」のどちらかで費用を徴収されています。基本的に、きちんと収めている分にはどちらも同じですが、それぞれ関連する法案が違うため、滞納した場合の事後処理に違いがあります。
国民健康保険料 | 国民健康保険税 | |
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賦課団体 | 大都市が多い | 地方が多い |
関連法令 | 国税徴収法 | 地方税法 |
消滅時効 | 2年 | 5年 |
弁済の優先度 | 住民税の次 | 住民税と同じ |
遡及期間 | 最大2年 | 最大3年 |
※消滅時効とは・・保険料の請求がされない場合、保険料の徴収権が無くなるまでの期間
※遡及期間とは・・過去の滞納分に対して請求できる上限年数
どちらの方式を採用するかは、それぞれ自治体に裁量権があります。
福岡県の場合は、福岡市・北九州市・久留米市が「国民健康保険料」、それ以外の市町村は「国民健康保険税」となっています。
税金の滞納分をそのまま納めず放置しておくと、法令に基づき「滞納処分」を受けます。
この「滞納処分」が財産の差押え→公売または取り立てという一連の流れになります。
税金滞納後の流れ
滞納処分は国税徴収法に基づき行われます。
地方税を滞納した場合は、地方税法による滞納処分となりますが、これには国税徴収法第5章の規定が準用されるため、地方税も国税も滞納した後は基本的に同じ流れとなります。
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- 税金の滞納
- 納期限を1日でも過ぎた場合は滞納となります。
- 税の納期限は、税の種類や自治体によりそれぞれ異なります。
- 納税通知書がある場合は、それに記載されています。
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- 督促状による催告
- 納期限後20日以内に督促状が送られます
- 法律上は、督促状を発送した日から10日を過ぎると、「財産を差し押えなければならない」とされています。
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- 電話や文書等による催告
- 督促状が送付されても納付がなされない場合、電話や文書または訪問による催告がなされます。
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- 財産調査
- 滞納者がどのような人なのかの身辺調査や、差し押さえのための財産調査などが行われます。
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- 差し押さえ・捜査
- 財産調査を基に、差し押さえるべき財産が決められ差し押さえが行われます。
- 動産などの場合は、自宅や事務所を捜査して差し押さえられる場合があります。
- また滞納者が第三者に対して持っている債権などが差し押さえられることもあります。
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- 登記や通知など
- 不動産の差し押さえを受けた場合、差押登記がなされ、抵当権者などには差押通知書が送付されます。
- 給与の場合は勤務先へ、預金は金融機関へ差押通知書が送付されます。
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- 公売・取り立てによる換価
- 差押え後も完納されない場合、インターネットや入札による公売が行われます。また債権などは取り立てがなされます。
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- 滞納した税へ充当
- 換価された金額が税の滞納分に充当されます。
税金の滞納による差し押さえは、法律で定められているため、裁判所の許可や判決が必要ありません。
また滞納者に対しての事前連絡や同意も必要ない正当な行政処分となっています。
滞納の原因や滞納金額により違いはありますが、最短で納期限から2ヶ月弱で差し押さえられる可能性があります。
財産調査は具体的に何を調べられる?
差し押さえの前に行われる財産調査では、差し押さえる財産を決めるための調査が行われます。
この財産調査も国税徴収法第141条に定められた権限ですので、個人情報保護法に抵触しないとされています。
具体的には以下のようなもの、滞納者に対してだけではなく、官公署・金融機関・勤務先・取引先などに対して調べられます。
身辺調査
- ・勤務先や取引先の調査
- ・所得の調査
- ・家族構成
- ・戸籍の調査(戸籍附票で、引っ越し履歴も調査されます)
財産調査
- ・給料
- ・不動産謄本の入手
- ・自動車の有無
- ・銀行口座(取引の詳細も調査されます)
- ・生命保険(解約返戻金など)
- ・売掛債権など
差し押さえできないもの
国税徴収法第75条により、生活や営業に欠くことができない財産は、差し押えることができないとされています。
具体的には、衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具、生活に必要な3月間の食料及び燃料、収入を得るために必要な道具(農業のための農機具や、漁業のための船や網など)、商品を除く業務に欠くことができない器具、実印などがあります。
国税徴収法 第六款 差押禁止財産(第七十五条―第七十八条) | 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ
税金滞納による差し押さえは、国税の場合は税務署員、地方税は自治体の職員が行いますが、どちらも国税徴収法による強い権限が与えられています。
財産の差押えが行われると、原則として完納しない限り、差し押さえの解除はなされません。
もし、災害や病気、失業などで税金の支払いが難しくなった場合は、納税の猶予や減免などを受けることができる可能性があります。
できれば税の納期限前、遅くても督促状による催告がきた時点で、税務署や市役所の納税課に相談なさってください。