相続した土地や建物は、活用する予定がなければ売却を検討なさる方も多いようです。
不動産は、資産として所有しているだけでは固定資産税などの維持費がかかりますので負担も大きいかと思います。
今回は、相続した土地を活用せず所有しておくデメリット、また相続した土地を売却する時の税金のことなどについて解説したいと思います。
相続した土地の売却をお考えの方は、是非参考になさってみてください。
【相続した不動産を売却しない場合のデメリット】
不動産を所有していると固定資産税の課税対象になりますので、経済的に負担になることがあります。
また建物については、居住するのであれば良いのですが、居住しないで放置しておくと建物が傷むなどで資産価値が下がってしまいます。
最初に、相続した不動産を売却しない場合のデメリットについてご説明いたします。
遺産分割に影響が出る場合がある
相続の場合、相続開始の時点では相続人全員で相続する財産を共同所有することになります。
その後、確定した相続人(相続放棄などの場合がある)で遺産分割協議により相続の割合を決定し、遺産を分割して相続します。
相続人が一人の場合は特に問題がありませんが、相続人が複数の場合、この遺産分割協議がまとまらないことも多いでしょう。
遺産分割協議がまとまらない主な原因は、やはり土地や建物などの単純に分割できない物をどうするかが焦点のようです。
遺産の分割をいつまでにやらなければならないという期限はありません。
ですが、相続税の申告期限(相続の開始を知った翌日から10ヶ月以内)があり、これを過ぎると配偶者税額軽減制度などの優遇が受けられなくなります。
その場合の解決策としては、相続した不動産を売却して現金化し、速やかに分割することが望ましいのではないでしょうか。
但し、遺言などで遺産分割が禁止されている場合もありますので、その点は注意が必要です。
固定資産税が課税される
不動産を所有していると、固定資産税を毎年納付しなければなりません。
固定資産税は地方税ですので、その固定資産が所在している市町村より課税されます。
また、毎年1月1日現在の所有者がその年の4月1日から1年度分を納付しなければならないので、注意が必要です。
固定資産税は、以下に記す計算式で課税額を計算することが出来ます。
<固定資産税評価額×1.4%=固定資産税>
例えば、固定資産税評価額が3,000万円の土地の場合「3,000万円×1.4%=42万円」
つまり、土地を所有しているだけで毎年42万円のお金がかかることになります。
固定資産税と都市計画税は納税必須?不動産所有中にかかる税金とは
不動産の資産価値が低下する
基本的に戸建ての建物やマンションなどの資産価値は、年々下がって行く傾向にあります。
特に戸建ての場合、居住しない、あるいは適切な管理ができないケースは建物自体の傷みも出てくるでしょう。
いざ売却しようとしたときに資産価値が下がって、当初考えていたよりも低い価格でしか売却できなかったということはよく伺います。
相続不動産を売却するのであれば、早めの決断をおすすめします。
【相続した不動産を売却するときにかかる税金の種類とは】
通常、不動産を売却すると譲渡益が発生し、その譲渡益に対して「譲渡所得税」や「住民税」などの税金が課税されます。
しかし土地を売却しても譲渡益がなければ、譲渡所得税は課税対象外となります。
相続した不動産の場合も同じように譲渡所得税がかかりますが、相続時に相続税が課税されている場合には、その相続税の一部を取得費用に計上することで譲渡益を押さえ、譲渡所得税を軽減できる場合があります。
売却する不動産に譲渡所得税がかかるケース
「譲渡所得」は、「売却金額」から「不動産の取得費」や「譲渡費用」を引いた額で出されます。
「売却代金」-(①不動産の取得費+②不動産の譲渡費)= 「譲渡益(譲渡取得)」
①不動産の購入代金以外に不動産所得税・登録免許の税金、購入後の設備費及び改良費や仲介手数料費などが含まれます。
②抵当権抹消費用など、譲渡の際に要する費用と仲介手数料及び広告費など売却するためにかかった費用です。
長期譲渡取得と短期譲渡取得の課税の違い
不動産を売却した際の税金は、不動産の所有期間で長期譲渡取得と短期譲渡取得に区分され、それぞれの税率が適用されます。
不動産の譲渡(売却)が行われた年の1月1日において、所有期間が5年以下か5年を超えるかで分けられます。
・所有期間5年以下 = 短期譲渡取得
・所有期間5年超 = 長期譲渡取得
不動産取得の日から、引き続き所有していた期間が所有期間となります。
相続や贈与を受けた場合、原則として相続や贈与を受けたその日から計算されます。
譲渡する際には所得税と住民税が課税されますが、短期譲渡取得よりも長期譲渡取得の方が優遇されているのです。
長期譲渡取得は税率に加え特別控除もあり、有利な面があります。
これは、短期譲渡取得の税率を高く設定して、土地の転売を防ぐ事が目的です。
譲渡取得税の税率
譲渡取得税は譲渡益(譲渡所得)に対して、短期と長期で以下の通りの税率となっています。
※2037年12月31日までは復興特別所得税(所得税額×2.1%)が加算されます。
・短期譲渡取得税の場合、所得税30%+住民税9%+復興特別消費税0.63% =39.63%
・長期譲渡取得税の場合、所得税15%+住民税5%+復興特別消費税0.315% =20.315%
マイホーム(居住用財産)を売却した場合には、所有期間10年を超す不動産の売却に対する軽減税率の適用や3,000万円の特別控除など優遇措置が受けられる場合があります。
※所有期間10年を超すマイホーム(居住用財産)の売却したとき
・譲渡所得金額6,000万円以下の場合、所得税10%
・譲渡所得金額6,000万円超の場合、 所得税=(譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円
マイホームを売ったときの軽減税率の特例 | 国税庁
※3,000万円の特別控除の特例
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円まで控除できます。
特例控除を受けるためには、売却する人が、その不動産に居住していることなどの条件があります。
マイホームを売ったときの特例 | 国税庁
相続財産を譲渡した時の取得費の特例
法令の特例では、相続税額の一定金額を、売却する不動産の取得費に加算出来ます。
<相続不動産取得費が加算される要件>
・不動産売却は、相続や遺贈によって財産を得た者
・その相続人に、相続税が加えられていること
・財産を相続後、相続税の申告期限の3年以内に売却していること
【相続不動産を売却した場合の確定申告】
所得を得た場合、確定申告をするよう法律で定められています。
不動産を売却したら、どのように確定申告をすればよいのか分からないことがあります。
また、どのような書類が必要なのか併せてご紹介して行きます。
不動産売却の確定申告は必要なのか?
不動産を売却された場合は確定申告が必要です。
不動産売却により利益が出たにも関わらず、確定申告を怠った場合、後に税務署に延滞税を支払わなければなりません。
不動産を売却して確定申告が必要になるのは、譲渡益(譲渡所得)があった人です。
不動産売却に際して、譲渡所得税の特例を受ける場合も確定申告が必要となります。
では、売却しても損失が出た場合はどうなるのでしょうか?
通常では、利益が出ない場合は税金が発生しないので確定申告する必要はありません。
また、不動産売却では例え損失が出ても、一定の要件に当てはまれば税金が少なくなる場合があります。
不動産売却で譲渡損失が出た場合
2015年の12月31日までに自宅を売却または、買い換えて譲渡損失が出た場合、要件を満たせば税金が安くなります。
譲渡損失には、二つの特例が設けられています。
・居住用不動産に買い換える場合、譲渡損失の損益通算と繰越控除の事例
・特定住居用財産の譲渡損失、損益通算と繰越控除の事例
売却した不動産の購入価格-(売却不動産を売った価格+売却不動産の購入時の諸経費)=譲渡損失の金額
<居住用不動産に買い換えた場合の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例>
この特例は、2015年の12月31日までに自宅を買い換え譲渡損失が出た時、損失分を他の所得から控除出来ます。
これで控除出来なかった分は、翌年から3年間は繰越控除出来るというものです。
それには、以下の要件を満たす必要があります。
・自宅の売却及び買い換えであること
・売却不動産は売却する年の1月1日までに所有期間が5年以上経過していること
・買い換える不動産面積が50㎡以上であること
・買い換えた年の12月31日の時点で住宅ローンが10年以上残っていること
・買い換えた翌年の12月31日までに住む予定であること
<特定居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例>
この特例は、売却した価格が住宅ローン残額よりも低く損失が出た時のものです。
要件を満たせば、損失分を他の所得から控除出来、出来なかった分は翌年から3年間繰越控除出来ます。
ただし、2015年の12月31日までの売却に限るものです。
それには、以下の要件を満たす必要があります。
・自宅の売却であること
・不動産を所有して5年以上経過していること
・自宅に居住しなくなり3年目の12月31日までに売却すること
・売買契約を結ぶ前日の時点で10年以上のローンが残っていること
住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき | 国税庁
確定申告に必要な書類
確定申告には、下記に挙げる書類が必要になります。
<税務署で揃える書類>
・確定申告書B様式
・分離課税用の確定申告書
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
<自らが準備する書類(コピー可)>
・不動産売買の売買契約書
・売却した不動産を購入した際の売買契約書
・仲介手数料や印紙税などの領収書
・固定資産税の清算書
・売却した土地、建物の全事項証明書
・買い換えた土地、建物の全事項証明書
・除票住民票(売却後2ヶ月経過後の発行分)>
相続した不動産を宝の持ち腐れ状態にしておけば土地の評価額は下がり、それに伴う固定資産税も発生します。
「相続倒れ」という言葉もあるくらいです。
不動産を売却する場合、課税の控除などをしっかり頭に置いて行うことが大切です。