競売での落札額が任意売却よりも安くなってしまう本当の理由とは

競売が安くなる理由

 

債務不履行(住宅ローンの滞納)をしてしまうと、最終的には債権者の申し立てにより所有不動産が競売にかけられます。
競売では、裁判所から派遣される執行官と不動産鑑定士の調査をもとに所有不動産が評価されます。

その後、売却基準価額(最低売却価格)が設定され、公示によって広く入札者を募集し、最高額を入札した人が落札者となります。
入札である以上、落札額が高額になる可能性はありますが、現実的には同じ物件を任意売却で売った場合の売却額より、落札額が上回るといったことはほとんどありません。

そもそも、なぜ不動産競売の場合、売却額が安くなってしまうのでしょうか。

この不動産競売が安くなるのは、いくつかの理由があります。
今回は、その理由について、詳しくご説明していきたいと思います。

【通常の不動産売買と違って買い主にリスクがある】

通常の不動産売却では、購入希望者自身が購入前に内覧で物件の詳細を確認します。
実は競売の場合でも内覧制度は有り、入札前に物件の詳細を確認することは可能なのですが、実際には内覧ができることはほとんどありません。

競売の内覧については民事執行法第64条の2で定められていますが、落札希望者が内覧をしたいと申し出て行われるのではなく、競売を申し立てた債権者が、内覧実施の申立てを行わなければなりません。

また競売での内覧は、差押債権者の申立てにより執行官が実施することになりますが、占有者へのプライバシーの配慮、動産の紛失や毀損事故の防止、内覧参加者同士での談合やトラブル、占有者に対する明け渡しの事前交渉など、注意しなければならない点が多くあります。

このようなことを考慮した場合、債権者にとって不利になるトラブルが発生する可能性もあるため、差押債権者から内覧実施の申立てはほとんど行われてないのが現状です。

このように実質的に内覧が行われず、落札希望者はいわゆる3点セット(「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」)を基に競売物件の入札額を決めなければなりません。

これにより、落札者は落札購入後に以下のようなリスクを負うことになります。

購入後に隠れた瑕疵(欠陥)があっても保証されない

実質的に内覧ができないことで、購入前(落札前)に詳しい不動産の確認ができないため、落札後に瑕疵(欠陥)が発覚する場合があります。その場合もその保証等はないので、落札者が負担して修繕等を行うことになります。

瑕疵(欠陥)とは、例えば雨漏りやシロアリの発生で木部が傷んでいたなどです。
執行官による現況調査では、まず確認されることがありません。

また、調査では分かりにくい家屋のよじれのような大きな欠損がある場合なども一切の保証がなく買受人(落札者)が修繕費用を負担することになります。

購入した物件に占有者がいた場合の引き渡しは、落札者自ら手続きする必要がある

競売の落札者が代金を入金すると、落札者は買受人となり所有権が移転します。

任意売却の場合は、仲介の不動産会社が債務者と話し合って退去日などが決まりますが、競売で落札者が取得した物件に占有者が居た場合には、落札者自身が退去・物件の明け渡しについて交渉しなければなりません。

交渉で決まらない場合、引渡命令・強制執行を経て、最終的には占有者に退去してもらう事になりますが、強制執行の申立てなどの費用が発生してしまいます。

この強制執行申立ての費用などは債務者への請求が可能ですが、そもそも債務者は住宅ローンが払えず競売となっているため、請求しても回収できるかはわかりません。

滞納金があった場合、落札者が負担しなければならない

マンションの競売物件の場合、前所有者による「管理費」「修繕積立金」「専用使用料」などの滞納金があった場合は全て落札者(買受人)が負担しなければなりません。

正確には、滞納管理費の請求は、売り主及び買い主のどちらかに請求できることになっていますが、競売の場合売り主(債務者)への請求は現実的でないため、落札者が負担することになります。

管理費の滞納があった場合には「物件明細書」に記されているため、競売に参加する落札希望者は、予めその分を考慮して入札を行います。
その分、落札額自体が低くなってしまう事になります。

【物件を知ってから購入までの期間が短い】

不動産競売は、債権者による競売の申立てから終了するまでの期間が、約6~8ヵ月の場合がほとんどです。
その中で落札希望者は、競売不動産物件の公告で物件を確認し、入札を検討します。
この不動産競売の公告から期間入札の締切までは、約3週間から1ヵ月と非常に短いといえるでしょう。

そのわずかな時間の中で、落札のために様々な準備を行う必要があります。

前準備

・物件の調査=購入を希望する物件をできるだけ調べておく
・資金の調達=入札時に最低売却価額の2割を保証金として用意する
※競売物件によっては2割以上の場合もあります。
・入札額の決定=最高額で落札するための入札金額を決める

入札提出書類

・入札書
・入札保証金振込証明書
・法人が入札する場合=登記事項証明書(代表事項証明書):発行後3ヵ月以内のもの
・個人が入札する場合=住民票:発行後3ヵ月以内のもの
・共同で入札する場合=続柄の明記されている住民票:発行後3ヵ月以内のもの
・代理人が入札する場合=委任状

このように短期間での準備のため、物件をゆっくり検討する時間が少なく、その分落札後想定外の出費を強いられる確率も高くなります。

そのことも考慮した入札額となるので、落札額は抑えられてしまいます。

【必ず落札できるわけではない】

前述のとおり、不動産競売の入札には、その準備のため様々なコストが発生します。
このようなコストが掛かっているにも関わらず、落札できなかった場合は、そのコストが無駄になってしまします。

競売ですので、当然入札者が複数の場合、最高額でなければ落札できず競売が終了してしまいますが、それ以外でも落札できないケースがあります。

競売の取り下げ

差押債権者の申し立てにより、競売を取り下げられる可能性があります。
取り下げの期限は開札日までですが、公告後であれば、入札に向けた準備などのコストが掛かってしまっている場合があるでしょう。

競売の取り消し

競売開始決定後に手続きで違法性が見つかったり、物件が火災などで消滅した場合などに競売開始決定が取り消される場合があります。

・目的物の滅失などによる取り消し
・無剰余による取り消し
・3度の売却を実施して、売却の見込みがない場合
・担保権が無いことを証明する確定判決が下された場合
・被担保債権全額が弁済された場合
・担保権の登記を抹消した場合

以上のような場合、民事執行法により裁判所が競売手続の取消を行います。

【そもそも最低入札額が低く設定されている】

2004年の民事執行法改正により、「最低売却価額制度」が「売却基準価額」になりました。
これは、入札価額の設定を2割低くすることで、不良債権処理が困難であった物件を、不動産競売が成立しやすくするために定められました。
その結果、落札確率が2.2%上昇したものの、落札価格は2.9%も下落しています。

「売却基準価額」は、一般市場価格(通常に売却した場合の相場価格)の4割から5割と低い基準です。
さらに「買受可能価額」(最低入札額)は、「売却基準価額」の8割になっています。

このことから、入札は一般市場価格の3割程度の価格から可能となっています。
「売却基準価額」が低く抑えられる理由は、前述の通り、落札者にとって一般の不動産購入よりリスクが高いためです。

「買受可能価額」で落札されることは、実際には稀ですが可能性はあります。
以上のように、競売は落札者にとって多くのリスクがあるため、競売での落札額が任意売却を行った場合の売却価格を上回ると行ったことはほとんどありません。
 

競売でも任意売却でも、債務から売却額を差し引いた残債が債務者には残ってしまいます。
再スタートを切りやすくするためにも、残債を極力減らすため任意売却の検討をお勧めします。
 

 

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